【メディア掲載】日本経済新聞:2015年12月1日付朝刊

社説:寄付の文化を定着させたい

民間企業や内閣府、NPOなどが集まって毎年12月を「寄付月間」とし、寄付を促進しようという試みが始まる。高齢化や貧困など社会には課題が山積しているが、政府は財政難で十分な対応ができる状況にない。民の力でよりよい社会をつくっていくためにも寄付文化を定着させたい。

例年12月は赤い羽根共同募金など助け合い運動が盛んになる。寄付月間推進委員会(委員長・小宮山宏三菱総研理事長)はこの時期を利用して、多くの人が寄付について考え、行動し、寄付を受けた側も寄付者に感謝する機会をつくりたいと考えた。

記念シンポジウムの開催のほか、ネット上でのチャリティーオークション、寄付をした人の顕彰式典などが開かれる。名古屋では居酒屋などで、生ビールの注文1リットルにつき1円が子どものための基金に寄付されるイベントなども実施される。

欧米に比べると今のところ、日本は寄付が盛んとは言い難い。特に少ないのは法人よりも個人による寄付だ。NPO法人日本ファンドレイジング協会によると、日本の個人による寄付は2014年で総額約7400億円。これは米国の3%にも満たない規模という。英国と比べても半分以下だ。

日本人が寄付に関心がないわけではなさそうだ。世論調査などを見ると、「社会のために役立ちたい」と考える人は多い。東日本大震災のときには実際に巨額の寄付が集まっている。

大きな災害や事故のときだけでなく、恒常的に支援が必要な現場があることをいかに周知していくかが課題だ。ネットなどを通したより気軽に寄付ができる仕組みの開発も必要だろう。

寄付を受ける側では、そのお金を何に使い、どのような成果を挙げたかを明確にすることも大切だ。「社会に役立つ」という漠然とした説明だけでは共感も得にくい。貴重なお金が現実のだれかの笑顔につながっていることを実感できるようにしてもらいたい。

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